仮想通貨の税金20%はいつから?2026年7月時点で「決まったこと」と「まだ決まっていないこと」

先に結論
税率20%の申告分離課税は、法律としてはすでに成立しています(2026年3月31日成立)。ただし「いつの取引から適用されるか」はまだ確定していません。適用開始は「金融商品取引法の改正法が施行された年の翌年1月1日以降の譲渡」と定められており、その施行日を決める政令が2026年7月31日時点でまだ出ていないためです。施行が2027年中であれば適用開始は2028年1月1日となり、その場合2025年分から2027年分までの申告は、これまで通り雑所得の総合課税(最大約55%)のままです。
「仮想通貨の税金が20%になる」というニュースを見て、今年の利益もその対象になるのか、それとも売るのを待つべきなのか、判断に迷っている方は多いと思います。この話題は「決定済み」「大綱に盛り込まれた段階」「まだ検討中」の3つが混ざって報じられており、記事によって書いていることが違います。
この記事では、2026年7月31日時点で何がどこまで確定しているのかを、一次資料に当たって整理します。曖昧な部分は曖昧なままはっきり書きます。
1. 何が決まったのか(確定している事実)
税率20%の分離課税は法律として成立済み
2025年12月26日に閣議決定された「令和8年度税制改正の大綱」に暗号資産の課税方式の変更が盛り込まれ、これを受けた所得税法等の一部を改正する法律案が2026年3月31日に成立しました。大綱の本文には次のように書かれています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 税率 | 他の所得と分離して20%(所得税15%、個人住民税5%)。復興特別所得税を加えた実効税率は20.315% |
| 対象 | 「金融商品取引業者登録簿に登録されている暗号資産等」=特定暗号資産を、暗号資産取引業を行う者に対して譲渡等した場合 |
| 損失の繰越 | その年の翌年以後3年内の各年分の特定暗号資産に係る譲渡所得等から繰越控除が可能 |
| デリバティブ | 特定暗号資産のデリバティブ取引も先物課税の特例の対象に追加 |
| 支払調書 | 暗号資産取引業者は、取引年の翌年1月31日までに氏名・個人番号・銘柄等を記載した報告書を税務署長へ提出 |
金融商品取引法の改正も成立・公布済み
税制の前提となる金商法の改正も、すでに成立しています。
| 提出 | 2026年4月10日 |
|---|---|
| 成立 | 2026年7月15日(参議院本会議) |
| 公布 | 2026年7月23日(令和8年法律第64号) |
この改正で、暗号資産取引に係る規制が資金決済法から金商法へ移管され、暗号資産は「有価証券とは別の金融商品」として位置づけられます。あわせてインサイダー取引規制が新設され、違反には5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金(併科あり)が科されます。
なお、ステーブルコイン(電子決済手段)は金商法移管の対象外で、引き続き資金決済法の下に置かれます。JPYCなどの円建てステーブルコインは、この改正の直接の対象ではありません。
2. 何がまだ決まっていないのか
適用開始日(ここが最大の未確定要素)
大綱の文言はこうです。
金融商品取引法の改正法の施行の日の属する年の翌年の1月1日以後に行う特定暗号資産の譲渡等について適用する
つまり、適用開始日は金商法改正法の施行日に連動します。そしてその施行日は、改正法の附則で「公布の日から1年以内において政令で定める日」とされており、2026年7月31日時点でこの政令はまだ制定されていません。
公布日が2026年7月23日なので、施行は遅くとも2027年7月22日までに行われます。施行が2027年中であれば、適用開始は2028年1月1日です。報道でも「28年から」とされていますが、これは施行が2027年中である前提の見込みであって、確定した日付ではありません。
注意
:「2028年1月から20%になることが決まった」と書いている記事がありますが、正確ではありません。決まっているのは「金商法改正の施行日の翌年1月1日から」というルールであって、その施行日自体がまだ官報に出ていません。政令が公布された時点で初めて日付が確定します。
対象範囲も政令・内閣府令待ち
どの銘柄が「特定暗号資産」として登録簿に載るのか、レバレッジ規制をどの水準にするのか、インサイダー規制における「大量売買」の閾値(発行済みの20%とする案が示されています)などは、いずれも今後の政令・内閣府令で定められます。
3. よくある誤解を3つ正しておきます
誤解1:すべての仮想通貨の利益が20%になる
これは誤りです。対象は「金融商品取引業者登録簿に登録されている暗号資産等(=特定暗号資産)」を「暗号資産取引業を行う者に対して」譲渡した場合に限られます。条文の構造上、国内の登録業者を通じた、登録された銘柄の取引が前提です。
誤解2:海外取引所やDEXの利益も20%になる
大綱の書きぶりからは、海外取引所やDEXでの取引は分離課税の対象外(=総合課税のまま)と読めます。レバレッジ取引の損益についても扱いが分かれる可能性があります(仕組みはビットコインの証拠金維持率で解説しています)。同様に、ステーキング報酬やマイニング報酬も、譲渡による所得ではないため分離課税の枠組みには入りません。ここは実務上かなり大きな違いになるので、詳細が政令で固まるまでは断定を避けるべき部分です。
誤解3:過去の損失も繰り越せる
損失の3年繰越が導入されるのは、あくまで分離課税に移行した後の特定暗号資産に係る譲渡損失です。制度開始前に出した損失を遡って繰り越せるわけではありません。
4. では、今どうすればいいのか
2025年分〜2027年分の申告は現行どおり
2025年分の確定申告は2026年3月16日で期限を迎えています。まだ申告していない場合は期限後申告、計算に誤りがあった場合は修正申告または更正の請求で対応します。現行制度での取扱いは、国税庁が公表している「暗号資産等に関する税務上の取扱い及び計算書について(令和7年12月)」が一次資料になります。2026年1月5日に更新されており、所得区分の記載が見直されています。
「売るのを待つべきか」という判断について
税率だけを見れば、総合課税で高い税率が適用される方にとっては、分離課税移行後に売却するほうが税負担は軽くなります。ただし、適用開始日がまだ確定していないこと、対象となる銘柄・取引の範囲が政令待ちであること、そして何より暗号資産の価格が待っている間にどう動くか分からないことを考えると、税制だけを理由に売却時期を数年単位で先送りする判断にはリスクがあります。ここは税理士に個別に相談すべき領域です。この記事は制度の整理であって、投資判断や税務判断の助言ではありません。
取引記録は今のうちに整えておく
制度が変わっても、取得価額の計算に取引履歴が必要な点は変わりません(具体的な集計方法は仮想通貨の税金計算ツールの使い方で解説しています)。むしろ移行期をまたぐ分、記録の重要性は上がります。取引所のCSVは保存期間に制限がある場合があるので、年1回はダウンロードして手元に残しておくことをおすすめします。
5. あわせて動いている制度
CARF(暗号資産等報告枠組み)は2026年1月に施行済み
国際的な税務情報の自動交換の枠組みであるCARFが、2026年1月1日に施行されました。国内の暗号資産交換業者等は2027年以後、毎年4月30日までに取引情報を所轄税務署長へ報告し、初回の情報交換は2027年に行われます。利用者側も居住地国等の届出書の提出が必要です。海外取引所の取引が把握されない、という前提はすでに成り立たなくなりつつあります。
税務調査の実績
国税庁が2025年12月に公表した「令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」によると、暗号資産に関する実地調査は613件、申告漏れ所得金額は156億円、1件当たり2,538万円、追徴税額は46億円でした。非違割合は95.3%で、調査対象になったケースのほとんどで申告内容の誤りが見つかっています。
まとめ
| 論点 | 2026年7月31日時点の状況 |
|---|---|
| 20%分離課税への移行 | 法律成立済み(2026年3月31日) |
| 適用開始日 | 未確定。金商法改正の施行日政令が未制定。施行が2027年中なら2028年1月1日から |
| 対象範囲 | 特定暗号資産に限定。詳細は政令・内閣府令待ち |
| 2025〜2027年分の申告 | 現行どおり雑所得・総合課税(最大約55%) |
| 損失繰越3年 | 移行後の特定暗号資産の譲渡損失が対象 |
| CARF | 2026年1月1日施行済み。初回情報交換は2027年 |
この記事は政令が公布され次第、更新します。「20%になるらしい」という段階の情報で判断せず、施行日が官報に出るタイミングを見てください。
出典
・財務省「令和8年度税制改正の大綱」(2025年12月26日閣議決定)個人所得課税
・財務省「所得税法等の一部を改正する法律案」第221回国会提出法案
・参議院「金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律案」議案情報
・金融庁「金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律案 説明資料」(2026年4月)PDF
・国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱い及び計算書について」令和7年12月版
・国税庁「CARF(暗号資産等報告枠組み)」制度概要
・国税庁「令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」PDF
※本記事は制度の整理を目的としたもので、税務・投資に関する個別の助言ではありません。具体的な申告や判断については税理士にご相談ください。