暗号資産のレバレッジ取引と証拠金維持率|取引所別のロスカット水準を比較【2026年】

先に結論
日本国内の暗号資産レバレッジ取引は、個人の場合上限2倍です。ロスカット水準は取引所によって「維持率75%」「50%」「25%」などバラバラに見えますが、これは危険度の違いではなく計算式の定義が違うだけです。数字だけを横並びで比較すると判断を誤ります。この記事では各社の計算式とセットで整理し、実際にいくら下がるとロスカットされるのかを具体的な数値で計算します。
「維持率が下がってきたが、あといくら下がると強制決済されるのか」——これに答えるには、自分が使っている取引所の計算式を知る必要があります。まずそこから整理します。
前提:国内は個人2倍が上限
暗号資産のレバレッジ取引で個人が使える倍率が2倍に制限されているのは、法令上の根拠があります。
- 根拠は金融商品取引業等に関する内閣府令 第117条第1項第47号〜第50号。個人顧客の証拠金率を想定元本の50%以上(=レバレッジ2倍上限)と規定
- 施行は2020年5月1日(改正資金決済法・改正金商法の施行日)
- これに加えて、日本暗号資産等取引業協会(JVCEA)の自主規制規則が実務上のルールを定めています
2026年7月15日に暗号資産を金商法の規制対象へ移管する改正法が成立しましたが、倍率の引き上げは法改正には含まれていません。倍率は内閣府令で定める事項であり、金融庁の法案説明資料にも引き上げの記載はありません。業界団体からの要望は継続していますが、2026年8月時点で個人2倍は変更されていません。
取引所別の取扱い状況
まず、そもそもレバレッジ取引を提供しているかどうかが分かれます。
| 取引所 | レバレッジ取引 |
|---|---|
| GMOコイン | あり(暗号資産FX/取引所レバレッジ取引) |
| bitFlyer | あり(bitFlyer Crypto CFD。Lightning FXは2024年3月28日に廃止され移行) |
| bitbank | あり(信用取引という名称) |
| SBI VCトレード | あり |
| BitTrade | あり |
| Coincheck | なし(2020年3月に提供終了) |
| DMM Bitcoin | なし。廃業し、口座・預かり資産はSBI VCトレードへ移管 |
本題:計算式が各社で違う
ここが最も誤解されている点です。以下は各社が公式に定めている計算式です。
| 取引所 | 維持率の計算式 | ロスカット |
|---|---|---|
| GMOコイン (暗号資産FX) | 証拠金預託額 ÷ 必要証拠金額 | 75%を下回った時 |
| bitFlyer (Crypto CFD) | (預託証拠金+建玉評価損益)÷(現物最終約定価格 × 建玉数量 × 証拠金比率) | 50% |
| bitbank (信用取引) | 委託保証金額 ÷ 建玉。維持必要保証金額=(建玉数量×平均建値)×リスク想定比率 | 委託保証金率25% |
| SBI VCトレード | (純資産 − 注文証拠金)÷ ポジション必要証拠金 × 100 | 80%以下 |
この数字を横並びで比較しないでください
分子と分母の定義が各社で違います。GMOコインは「証拠金預託額 ÷ 必要証拠金額」、bitFlyerは「(預託証拠金+評価損益)÷ 必要証拠金」、bitbankは「委託保証金 ÷ 建玉」です。bitbankの25%とbitFlyerの50%は、分母の定義が違うため、実質的な危険水準はほぼ同等です。「bitbankのほうが粘れる」と読むのは誤りです。自分が使う取引所の計算式で考えてください。
追証(追加証拠金)のルール
ロスカットより手前で発生するのが追証です。ここは期限が短く、しかも各社バラバラなので要注意です。
| 取引所 | 判定タイミング | 入金期限 |
|---|---|---|
| GMOコイン | 毎営業日6:30より順次判定。維持率100%未満で不足額発生 | 発生した営業日の午前3時まで |
| bitFlyer | 維持率100%未満 | 翌営業日16:59まで |
| bitbank | 毎営業日15時判定 | 基準時から24時間以内 |
| SBI VCトレード | 維持率100%未満 | 翌営業日4:59まで |
ロスカットの判定タイミングも異なります。GMOコインは「巡回しながら監視」とされておりリアルタイムに近い運用、bitFlyerは維持率50%到達時に即時決済し、追証が解消されない場合は発生から23時間後に強制決済されます。bitbankは追証判定が15時の定時である一方、強制決済は随時です。
「定時判定だから夜中は安全」ではありません。強制決済は多くの取引所で随時行われます。
見落とされがちなコスト:建玉管理料
ポジションを持ち越すと、日次でコストが発生します。手数料無料をうたっていても、ここは別途かかります。
| 取引所 | 建玉管理料 |
|---|---|
| GMOコイン | 建玉金額の0.04%/日(ロールオーバー時) |
| bitFlyer | レバレッジポイント0.04%/日(買建・売建とも。毎営業日18:00ロールオーバー) |
| bitbank | 0.04%/日(年率14.60%) |
| BitTrade | ポジション管理費0.03%/日(毎営業日0:00時点の保有分) |
| SBI VCトレード | ファンディングレート(変動制)。毎日18時までに公表し、翌朝6:59:59時点のポジションに適用 |
年率に直すと14.6%前後です。長期保有には全く向いていません。3か月持ち越せば、それだけで建玉金額の3.6%程度がコストとして出ていきます。相場が横ばいでも資産は減ります。
具体的に計算してみる
GMOコインの計算式(証拠金預託額 ÷ 必要証拠金額)を使って、実際の数値で追ってみます。前提を単純化するため、ここでは建玉管理料とスプレッドは考慮していません。
| 前提 | |
|---|---|
| ビットコイン価格 | 1,500万円 |
| 建玉 | 0.1 BTC の買い(=150万円) |
| レバレッジ | 2倍 |
| 必要証拠金 | 150万円 × 50% = 75万円 |
| 入金額 | 75万円 |
この状態で維持率は 75万 ÷ 75万 = 100%。ロスカット水準の75%に達するのは、証拠金預託額が 75万 × 75% = 56.25万円まで減ったときです。
つまり評価損が 75万 − 56.25万 = 18.75万円 に達した時点。0.1 BTCで18.75万円の含み損ということは、1BTCあたり187.5万円の下落です。
1,500万円 → 1,312.5万円、率にして12.5%の下落でロスカットという計算になります。
ビットコインが1日で12%動くことは珍しくありません。2倍という「低い」レバレッジでも、証拠金ギリギリで建てれば1日の値動きで飛ぶ水準だということです。維持率に余裕を持たせるには、必要証拠金より多めに入金しておくしかありません。
税務上の扱い
レバレッジ取引の損益は、現物と同じく雑所得(総合課税)です。ここは誤解が多いので整理します。
- 国税庁のFAQは、暗号資産の証拠金取引について「租税特別措置法に規定する申告分離課税の適用はありません」と明記しています
- したがってFX(外国為替証拠金取引)との損益通算はできません。FXは申告分離課税で、暗号資産の証拠金取引はそこから除外されているためです
- 給与所得や株式譲渡益など、他の所得区分との損益通算もできません
- 損失の繰越控除もできません
- 現物取引とは同じ雑所得の区分なので、雑所得の内部では通算されます
なお、2026年に成立した法改正により、将来的には申告分離課税20%への移行が予定されています。ただし適用開始日は未確定で、レバレッジ取引がどう扱われるかを含めて政令待ちの部分があります。
まとめ
- 国内の個人向けレバレッジは2倍が上限。2026年8月時点で引き上げは決まっていない
- ロスカット水準の数字は各社の計算式が違うため、横並び比較は無意味
- 追証の入金期限は取引所ごとに大きく異なる(当日午前3時〜翌営業日夕方まで)
- 建玉管理料は日次0.03〜0.04%、年率14%超。持ち越すほど不利
- 2倍でも、証拠金ぴったりで建てれば12%程度の下落でロスカット
- 税務上は雑所得の総合課税。FXとは通算できず、繰越控除もできない
レバレッジ取引は、倍率の低さよりも証拠金にどれだけ余裕を持たせるかで安全性が決まります。維持率100%ちょうどで建てるのは、実質的にはるかに高いレバレッジを掛けているのと同じことです。
出典:GMOコイン 暗号資産FX取引説明書/GMOコイン ロスカットとは/bitFlyer Crypto CFD ご利用案内/bitbank 信用取引ルール/bitbank 追証とは/SBI VCトレード レバレッジ取引/BitTrade CFD/国税庁 暗号資産に関する税務上の取扱いFAQ/金融庁 改正法案説明資料 ※各社の条件は2026年8月時点
※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の取引を推奨するものではありません。レバレッジ取引は損失が証拠金を上回る可能性があります。取引条件は変更される場合があるため、必ず各社の公式ページでご確認ください。

